大丈夫? 初老の方が大型犬!?大きいワンコを“買う”親世代

スペシャル対談(村谷親男(獣医師) × 村尾隆介(ビジネス書作家))

ペットショップだけが悪じゃない でも「売らない勇気」があってもいい

村谷親男(獣医師)|

最近、初老の方々がペットショップで大型犬を買うケースが増えてきたなって肌感覚では思います。

村尾隆介(ビジネス書作家)|

具体的には60~70代の方々ですか? 子どもころから大型犬に憧れていたり、または「最後に飼いたかった犬種がいて…」という話は僕もよく聞きます。

村谷|

問題だなって思うのは、ペットショップが「その場の売上」を優先して売ってしまうこと。寿命や健康(飼い主の)の他にも『初老の方と大型犬』というマッチングは、いろいろなリスクが伴います。

村尾|

散歩量とかもありますね、特に都市部では…。他には、どんなリスクが?

村谷|

大型犬は運動量も豊富で、パワーもあります。犬がトレーニングを受けていないと、お散歩で飼い主さんが引っ張られて転んでしまい、怪我をするリスクがあります。飼い主さんがケガや病気で面倒を見ることができなくなった時のバックアップもよく話し合って欲しいですね。

村尾| ペットショップの若い店員さんなら特に接客時に切り出しにくいかもしれませんが、そういったご家庭のバックアッププランのことなどもツッコンだ、本当に親身になっての…いや、ご家族の一員になったくらいの気持ちで販売をしてほしいですね。場合によっては「売らない勇気」も必要だと思います。

ごはんやトリーツを与えることが 「可愛がっている」になりがちに…

村谷|

村尾さんはラブラドールレトリバーを飼ってらっしゃいますが、その始まりはまさにご両親が飼いきれなくなった後の“バックアッパー”として…、でしたね。

村尾|

そうなんです。両親共に75歳を超えてから、ふと立ち寄った神奈川県のペットショップで営業をされたようで…。0~3歳の途中まで両親が飼っていたのですが、4歳から僕と、僕と暮らしている彼女が引き取りました。

村谷|

一時はものすごく大きくなってしまって、なんと体重が60キロになったと聞いています。

村尾|

僕の両親はすごく可愛がっていたのですが、どうしてもその愛情表現が「食べものを与えること」に向かいがち。体力や足腰の問題で、毎日の散歩も足りなくなっていき、最後は60キロという大台に。ちなみに、これは僕よりも、僕の彼女よりも重く、家でいちばんのヘビー級がイヌだったという…。こういった傾向(年配の方が飼う大型犬はオーバーウェイトになりがちという)って獣医師として感じるものはありますか?

村谷|

まさに村尾さんのおっしゃる通りです。おやつのレパートリーに少し気を付けるだけでも、ずいぶん違います。愛犬が食べていると安心するし、心が癒されるんですよね。しかし、大型犬に関しては関節炎のリスクなども高くて、体重は一定に保ってあげたいです。できれば、おやつは1日量を朝に決めて瓶に詰めるなどして、その中から与えることで制限するなど、工夫ができるといいですね。

引き取る側の家族状況や健康リスク…売る側・譲る側がちゃんと把握を!

村尾|

ご年配の方が大型犬を飼うリスクや、そのバックアップ、今先生がおっしゃたようなトリーツひとつとっても工夫をするといいというアドバイス…、このあたりをペットショップさんがセールストークをするときに含めてほしいですね。でも、現状はどうなんですか、ペットショップが大型犬をシニア層に販売しようとしているときって?

村谷|

現在のシニア世代には大型犬への思い入れがあると思います。海外ドラマで観たコリーから始まり、ラブラドール、ゴールデンレトリバー、ハスキー犬など、80~90年代にかけて日本で大型犬は今よりもずっと身近でした。その世代が、ふとペットショップに立ち寄って、昔を思い浮かべながら大型犬の仔犬を抱っこしてしまうと…、そこからは安易に想像が付くと思います。

村尾|

うちの両親もペットショップで抱っこしてしまったといっていました…(苦笑)。

村谷|

楽しかった時代や、憧れを抱いていたころを思い返して、再びペットを飼うことはとても素晴らしいことだと思うし、シニア世代にもペットとの暮らしを満喫して欲しいと願っています。ただし売る側、譲る側はきちんと家族背景を把握してから、新しい家族を選ぶお手伝いをしてあげて欲しいですね。

村尾|

僕が散歩していると、そういった年齢層の方が「触ってもいいですか? 私たちも最後に大型犬を…。でも、もう無理かなって…」といってくることは、毎日のようにあります。そんなときには「ぜひ飼ってほしいです」と伝えますし、「『もう無理!』となったときに引き継げるご家族や周囲の方はいますか?」とまで深掘りした立ち話になることも、しばしばです。すると「子どもたちはマンション暮らしなんで…」という回答が実際には多いです。

村谷|

でも、まさにそんな感じで売る側・譲る側はトークの中で深掘りをしていってほしいです。

「シニア世代が大型犬を飼う」 そのケースを増やすために必要なこと

村尾|

「シニア世代が大型犬を飼えるような世に」するためには、何が必要なんでしょう? 僕はコミュニティやファシリティで、“みんなで飼う”ということが、もっと増えてもいいかなって思っています。完全なる“飼う”ではないですが、もっと大型犬と触れ合える日本の社会をつくっていきたいので。

村谷|

シニア世代が大型犬と共生できる集合住宅や、施設が増えて欲しいです。レトリバー犬は日本語では使役犬ですから、こういった場所に相性はいいはずです。人間の医療では、ここ数年で拡がったウェブ診療が獣医療でも使えるようになりつつあります。シニア世代が大型犬を動物病院に連れていくことが大変だという話も聞きますので、こういった遠隔診療を利用したサービスの拡充も必要だと思います

村尾|

あとはドッグウォーカーやプール、犬の遠足などを、もっと気軽に。そして、そういったサービスが増えてほしいです。僕が一般的なシニア世代と運動量が必要な犬種(大型犬)の組み合わせを見ると、散歩や知的な遊び・フィジカルな遊びが足りていないかもと思うときがあります。大型犬の「あぁ、今日は遊んだなぁ」という顔をいっぱい見られるようなサービスがもっと増えたり、もっと使えたりするといいなあ。

村谷|

そのためにはワンストップで行えるトータルサービスがあるといいですよね。ここに相談したら、犬の満足度を上げてあげられる全てが揃っているような。犬がヒトにもたらす健康効果は、論文や発表からも明らかであることが分かっています。シニア層が迷うことなく相談できる窓口があれば、ヒトの健康寿命も伸ばせると思います。

今回の対談相手

村尾隆介さん(ビジネス書作家)

https://anima-ah.com/service/#shakaiouken

アニーマどうぶつ病院のブランディング&SDGsプロデューサーであり、

ビジネス書のベストセラー作家の村尾隆介さん。本編でも触れたように村尾さんもご両親からラブラドールレトリバーを引き継いで一緒に暮らしており、まさに今回のテーマの当事者だからこその目線もとても感じられました。

様々な業界の問題、社会問題に対して多くの知見をお持ちの方ですので、ぜひ村尾隆介さん率いるスターブランド社のホームページも見てみてください!刺激でいっぱいですよ。

www.starbrand.co.jp


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銀座に近い、高層マンションに囲まれた東京月島にある当院では、外国人フレンドリーなどうぶつ病院を目指しています。外国人ペットオーナーのみなさまが、どんな小さなことでも気軽に相談できる場所となるために、今後もさまざまな取り組みを進めていきます。

当院WEBサイト https://www.anima-ah.com/

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